生態学ってなに?
はじめまして。chiと申します。
今年の春に大学院(修士課程)を修了し、現在とある飼料メーカーで働いている普通のサラリーマンです。「飼料」とは牛・豚・鶏・魚などの餌のことです。本来であれば一社員として飼料業界についてお話したいところですが、なにぶん入社半年のペーペーですのでネタらしいネタを持ち合わせておりません。そこで、しばらくの間、私が大学生・大学院生として学んできたことについてご紹介したいと思います。
私は本ブログの主宰であるkurainと同じ北海道大学出身です。学部は水産学部。全国で4つしかない水産学部のうちの1つです。水産学部というとよく「将来は漁師?」と聞かれますが、必ずしもそんなことはありません。むしろそんな人は過去6年間で1人しか知りません。水産学とは、水圏を科学する学問の総称です。生物以外にも、漁具開発、海洋観測、水質浄化、食品加工、流通・経済、漁業法など、生物系・物理系・化学系・経済系・法律系が共存しており、同じ学部なのに相手のやってることがわからないくらい幅広い分野をカバーしています。とはいえ、やはり魚や川・海が好きな人は多く、ウチの大学の場合6割くらいは生物系に属していました。そんないろいろな人がいる水産学部で私が何を専攻したかというと、それは生態学(主に魚)です。
生態学は英語でecology。最近環境問題などでよく使われるエコロジーとはまったく意味が異なります。ecologyの”eco”はeconomy(経済学)の”eco”と同じ意味です。つまり、ecologyは生物界の経済学なのです。生物が起こすすべての現象はベネフィット(利益)とコスト(損失)のバランスにより成立・変化するもので、生物は自身のベネフィットが最大になるような性質を持ち、行動をとる。そうみなした上で生物の不思議を科学する学問が生態学なのです。
例えば。
日本では初夏のころ、ウミガメが産卵のために砂浜に上がってきます。産卵のときに見られるものが「母ウミガメの涙」。「あれは生みの苦しみに涙しているんだよ。」とか「きっと子供が無事生まれてくるのを祈ってるんだね」とか聞いたことがあるのではないでしょうか。そういう考え方、いいですね。個人的には大好きです。
でも、生態学では通用しません。感情論や精神論で生物の行動を語ってはいけないのです。
ご存知の方は多いと思いますが、ウミガメが涙を流す理由は体内の塩分濃度を調節するためと考えられています。浸透圧の関係上、ウミガメの体内の水分は自然に体外へと排出されます。そのため、大量の海水を飲んで水分補給をしなければなりません。すると体内の塩分濃度がどんどん上がり、生理機能に支障が出てきてしまいます。それを防ぐため、ウミガメは塩分濃度の高い涙を流しているのです。ある人が測定した結果、人の涙の塩分濃度が0.9%だったのに対し、ウミガメの涙の塩分濃度は9.6%もあったそうです。
話が逸れてしまいました。それではここでのベネフィットとコストはなんでしょうか。
ベネフィットは体内の塩分濃度を適正な値に調節できること。コストは体内の塩分濃度を排出すること(海水を摂取していない状態でも塩分は排出されてしまうので、過剰排出は塩分不足を招きます)。
ベネフィット>コストならウミガメは涙を流します。
ベネフィット<コストならウミガメは涙を流しません。
ベネフィット=コストならどちらでも良いです。
したがって、”ウミガメは塩分調節を行ったほうが利益を得るので涙を流す”のです。さらに言えば、自身のベネフィットが最大になるような性質を持ち、行動するので、”塩分不足を起こさず濃度調節ができる量の涙を流す”はずです。そして、そのような行動をとるよう進化してきたのです。もし将来、ベネフィット<コストになるような状況が出てきた場合(例えば、沿岸開発等によって産卵により多くの時間がかかり、乾燥度合がより強くなった場合)、涙を流すウミガメは徐々に減少していくと考えられます。
このように生物の行動をベネフィットとコストで説明する学問、それが生態学なのです。
生態学という言葉は良く聞くけど実際にはどんなもの?という人が多いと思い(実際私はそうでした)、簡単に説明いたしました。生態学は非常に大きなカテゴリーですので1日ですべてを書くことはできません。これから少しずつご紹介したいと思いますので、興味のある方・お時間のある方に読んでいただければと思います。次回は前文でチラッとでてきた「進化」についてお話したいと思います。ご清覧ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。