進化こそが生物マスター
進化(英:evolution)・・・生物の遺伝的形質が世代を経る中で変化していく現象のこと。(wikipedia - 「進化」より)
進化版、進化系、おめでとう!○○は××にしんかした!。日常のいたるところで「進化」という言葉が使われています。意味合いとしては、アップグレード・後継・改良・強化と言ったところでしょうか。今までよりも便利になった!今までよりも優秀になった!そんな時私たちは「進化した」と使いますね。この「進化」という概念、実は生態学の世界において最も重要なものの1つです。どんな生態学の教科書を開いても、一番最初に進化について書かれています。なぜなら、進化を絡めなければ生態学の謎は解けないからです。
進化と言えば有名なのが、ダーウィンの『自然選択説』(1858年)。自然選択説とは、親から子へと受け継がれる(遺伝)形質の変異が環境により選択され、生息環境に有利な形質を持つ個体が生き残り、不利な形質を持つ個体は淘汰されるという説です。
たとえば、ある生物種の生存可能な温度範囲が0℃~40℃だとしましょう。この種の中には暑さに強くて寒さに弱いもの、逆に寒さに強くて暑さに弱いものなど、様々な適温範囲を持つ個体が存在します。さて、あるとき大寒波がこの生物を襲いました。するとどうなるでしょう?答えは簡単、寒さに強いものが生き残り、寒さに弱いものは死んでしまいます。これが自然選択です。
上の例はある一時期を示したものですが、長期的に見るとどうなるでしょうか。
引き続きこの生物を例にとります。大寒波が襲った後に通常の温度環境に戻ったとします。すると、生き残った”寒さに強いもの”の中でも”より暑さに強いもの”が生き残りやすくなります。そして、世代を経るごとに通常の温度環境に最も適した個体が増えていくのです。このように、環境の変化に応じてそのつど最適な形質を持つ個体が生き残り、現存する生物はその選択がかかった結果なのです。
ここまでご説明した中で最も重要なところは、自然環境が生物の形質を選択するところです。
何が言いたいのかというと、生物は環境に適応するために変化を起こしているわけではない、ということです。例えば、「キリンの首はなぜ長いの?」と言う問いに対して「高いところの葉っぱや小枝を食べるために長くなったんだよ。」とか「生き残るための戦略なのです」言う答えが一般的だと思います。これは正確な答えではありません。なぜなら、キリンが能動的に長くしたわけではないからです。wikipediaの言葉を借りるならば、「首の長いキリンの方が(短いほかのキリンより)多数の子孫を残せたため、結果として首の長いキリンばかりにな」ったのです(「進化」より)。
なぜ首の長いキリンが多く子孫を残せたかについて議論の余地があると思いますが、食物競争に負けて高いところにある葉っぱや小枝しか食べられなくなったか、外敵をより早く発見するためかのどちらかだろうと言うのが私的意見です。
さて、ここまでつらつらと述べてきました『自然選択説』。いくつかの批判はあるものの、現在の生態学の根幹を成す重大な理論となっています。ダーウィンも、これで生物界の事象の多くを説明できるとさぞや喜んで・・・はいなかったのです。なぜなら、自然選択説では説明できない事象が存在したからです。それはクジャクのオスの綺麗な羽です。
クジャクの大きくて綺麗な緑色の羽、皆さんも写真や動物園などで見たことがあるでしょう。広げた羽の見事さは言わずもがなです。でも、ダーウィンの着眼点はそこではありませんでした。「なぜ自然界であの大きくて目立つ羽が選択されるのだろう?」、これがダーウィンの感想でした。彼が納得できない理由は次の2つ;
①大きいので維持コストがかかりすぎるのでは?
②目立つので外敵に発見されやすく、大きな羽は逃走に邪魔なのでは?
確かに、どう考えても生存に有利には見えません。かといって武器になりそうにも見えません。ダーウィンは困りました。
しかし、観察を続ける中である発見をします。大きな羽を持つのはオスで、メスに求愛するときに羽を広げるということです。もしやと思ったダーウィンは、羽が多くて綺麗な羽を持つオスとそうではないオスをメスに求愛させてメスがどちらを好むかと言う実験を行いました。すると、メスは羽が大きくて綺麗な羽を持つオスを選ぶ傾向があることに気づきました(今では異論もあるようです)。つまり、生存には不利なように見えたクジャクのオスの羽は、メス(配偶者)を獲得する上では有利だったのです。これを『性選択説』と言います。性選択はいろいろな生物種で見られます。例えば、多くの動物種ではオスのほうが大きいことが知られていますが、これもメス獲得のためと言われています。人間もそうですね。大きな体は維持にかかるコストが大きくても、配偶者を得る上では(オス同士の争いに)有利だと考えられます。生存に不利と思われる形質も配偶者獲得の上で有利であれば選択されうる、と言う考えが性選択説です。
ダーウィンの提唱した『自然選択説』と『性選択説』が、現在の生態学、そして進化論の基礎中の基礎となっています。現在、これらの考え方を元に発展させた理論が作られ、新しい進化論が形成されています。個人的には性選択の分野にとても興味があるので、これからご紹介できればなぁと思います。