のべかん第4回 〜どう考えてもタイトルで損をしています〜
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のべかん第4回は「核地雷だと思ったらそんなことはなかったぜ」な作品『女子高生=山本五十六』でお送りします。
タイトルだけ見て「なんだ後知恵の仮想戦記か」と思った人挙手。
正直なところを言いますと、私もそうです。核地雷踏んでみるのもたまにはいいよね的な気楽さで読んでみたわけですよ。よくてビーンボールくらいかなと思っていたわけですが、内角いっぱいに来たかんじ。
とりあえず、あらすじとかを。
近未来、資源開発を巡り日中の武力衝突が尖閣諸島で発生。海自の新鋭イージス艦「もがみ」が中国海軍の駆逐艦「蘭州」に先制攻撃を受ける。その場に居合わせた潜水艦「うんりゅう」の艦長は専守防衛を盾に「蘭州」への反撃を行わず、結果、海自は「もがみ」を喪失。
この「うんりゅう」艦長の判断を問題視した(+世論のヒステリーで予算が増えた)海自と政府の偉い人たちは、指揮官養成のためのVRシステムを導入。
このVRシステムを誰かを彷彿とさせるオタクの防衛大臣が『歴史教育プログラム ”セカンド・ウォー・リアル”』と称して教育現場にねじ込み、主人公・高山五十美(女子高生)がゲーム中で『山本五十六』の『中の人』となり、帝国海軍を率いて第二次世界大戦を戦っていく、という話。
主人公の高山五十美はメガネ・巨乳・態度でかいと三拍子そろっていて、これは間違いなくラノベ!
とか思ったんですが、途中でふと思ったわけです。ああ、これは『よくできたHearts of Iron II』のAARなんだなあ、と。AARというのは『After Action Report』の事で、プレイ中にあった諸々の事件を文章など様々な手法で他の人に紹介するものなんかを指します。
HoI2というのは、パラドックスの戦略級シミュレーションゲームで、国内では日本語訳がサイバーフロントから発売されています。
ニコニコ動画だと『im@s架空戦記シリーズ』とかで原料にしているものがあったり、HoI2 wiki AAR DivisionにはAARが多数収録されていたりします。手始めとしては4gamerに連載されていた『世界ふしぎ大戦』が読みやすいのでオススメ。
さて、少し話がそれましたが、本作では(今のところ出ている2巻まででは)『セカンド・ウォー・リアル』というゲームの中での話がメインになります。『セカンド・ウォー・リアル』の開発元でもある、どこかで聞いたような名前の巨大IT企業の偉い人の台詞を借りるならば「[セカンド・ウォー・リアル]は、第二次世界大戦の状況を再現し、シミュレートするネットワーク・ウォーゲームだ。プレイヤーは連合国側、あるいは枢軸国側の軍人になって、この戦争を戦うんだ」ということになります。分かる人にはMMOになった『HoI2』というのが手っ取り早いでしょう。KOEIの『提督の決断』でもいいんですけど。
先述のHoI2でもそうなのですが、この手の歴史物シミュレーションゲームでは『プレイヤーが先の展開を知っている』ことが最大の強みになります。1939年8月23日に独ソがモロトフ=リッベントロップ協定を結び、9月1日に独軍がポーランドに侵攻することを『知って』いるわけで、それに合わせた行動を取れてしまいます。
本作中の『セカンド・ウォー・リアル』では、日本に限らず、独・伊・米・英(英連邦諸国も含む)・フィンランドもプレイヤー(達)が担当することになっているので、お互いに後知恵での殴り合いになるわけです。
対AIとは異なり、『後知恵』が一方的に通用しなくなるので、相手がどんな後知恵を使うのかを読みつつ自陣営に巧く後知恵を叩き込んでいくところが人間相手の腕の見せ所というわけですね。
面白いのは、例えば日本だと堀越二郎(零戦の主任設計技師)のような技術者にも『中の人』がいること。ドイツだとクルト・タンク博士とか。作中では現役の技術者を始め、高専生から引退した技術者までがよってたかって日本の工業技術を底上げしてたりします。
『後知恵』での日本の技術水準の底上げは、例えば『迅雷計画』(著:佐原晃)で巻史郎が試みたりしていますが、あっちはタイムホールを使って未来技術の産物を直で持ち込めるのに対し、本作はなにぶんゲームなのでそういうチートはできません。
少なくとも、(いまのところ)本作での第二次世界大戦はゲームの舞台装置でしかなく、史実を知らなくても読んでいけるのはいいところ。そもそも主人公の高山五十美からして一般的な高校生程度の歴史知識しか持っていないわけで、要所では解説が入りますし。まあもちろん、史実を知っていると「ああ、そう持って行くのか」という楽しみ方もできますが。
あと本作はたいがい小ネタが多く、『悲しいけど、戦争なのよね』とかのセリフや、『マイクロフト・ゲイツ』とかいう名前の巨大IT企業社長とかを始めとして、かなりの数の小ネタが仕込まれています。探しながら読むのも楽しみの一つかと。
だんだん話が散らかってきたのでそろそろ締めますが、少なくともタイトルだけでイロモノ認定して敬遠してしまうのはもったいない、という事だけは間違いない本作『女子高生=山本五十六』でした。楽しめるかどうかは知りませんが。
あ、あと神重徳は俺にやらせてください。