のべかん第11回 ~ねじれの位置も忘れないであげてください~
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さて、11回目の「のべかん」です。引越の準備が全く進まなくて大変な状況に追い込まれつつありますが、それはそれとして。
今回は第15回電撃小説大賞・金賞受賞作、静月遠火氏の「パララバ -Parallel lovers-」でお送りします。
さて、本作パララバはタイトルからも想像できるようにパラレルワールドものです。
遠野綾と村瀬一哉はそれぞれ違う高校に通う二年生。部活をきっかけに知り合い、頻繁に電話はするけれど実際に会ったことはない、そんな関係。
そんなある日、夏休みの終わりに一哉が事故死してしまう。通夜から帰った綾の元にかかってきた電話は、死んだはずの一哉からの電話だった。そして一哉が告げたのは、なんと自分の死。いったい何がどうなっているのか・・・?
まあご想像の通りでして「綾の世界では一哉が」「一哉の世界では綾が」死んでいるというパラレルワールドになる(なると言う表現は微妙な気がしますが)わけです。二つの世界をつなぐのは携帯電話だけ。
二人はお互いの死にある不審な点を、そして何よりなぜ殺されたのかを探るため、それぞれの世界で動き始める。
というのがあらすじ。
平行世界という舞台やヒヨコ連隊(綾の高校で流行っているマスコット)などの小道具を上手く使っているので、ミステリとしてもなかなかかもしれません。
伏線を回収しつつ真相が明らかになる終盤まで、視点は基本的に綾固定で進んでいきますから混乱しなくていいですね。
ストーリーに大きな破綻もなく安心して読める堅さ。勢いと言うよりは丹念に叩いて読ませるタイプの文章なので、読みにくいと言うこともなくやはり堅実にまとまっています。
まあ、ぶっちゃけた話をすると動機が・・・という気分はあるんですが、まあこれはこれでありなのかなあ。この辺は好みの問題なので読んだ方にお任せするしか・・・。
あ、あれだ。ノリとしては初期の乙一氏に近い感じかな。さみしさの周波数とか、あの時代。
まあ何というのか、他の作者さんの作品を引き合いに出して紹介するのもどうかと思わないでもないですが「なんとなくこんな感じ」というのを手っ取り早く伝えるには楽なので勘弁していただきたく。
前回も書いた気がしますが、どう化けるかを追うのも新人賞の楽しさの一つなのですが、ここまで安定してしまうと次回以降どうするんだろうねと余計な心配をしたくなってしまう感じです。
だがしかし静月遠火氏の次回作にも期待。