これをSFと言い張る勇気が僕には無い
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『魂の駆動体』 著:神林長平 ハヤカワ文庫JA
この物語は車で走るということとはどういうことか、を書くだけに終始し続けるという㌧でもない作品。
おまけにSFに分類されるくせに作中の車は今ですら古い型の車ばかりという矛盾。
さすが神林長平。
さて、話の方だが、それぞれ別の時代、別の場所での二名の主人公の視点による二軸の物語になっている。
まずは一つ目、主軸と言っても良いかもしれない。
今より少しだけ未来、科学の発展が多少進んでいるが人間社会はあまり様変わりしていない数十年後の話。
養老施設で老後を過ごす主人公はある日、今ではすっかり見なくなった内燃機関式の自動車を見ることになる。
すっかり錆付いて動かないスクラップであったが、それはクラッシックカーの愛好家であった彼の父親が持っていた車の中の一台と同じ型のものであった。
その車のことを契機に、往年の自動車に対しての郷愁的なものが頭から離れなくなる。
今は全ての車は電気モーター駆動で運転も人の手ではしなくなってしまっている時代になっているのだ。
主人公はあの車を見てからついて回る考えを同じ施設の友人である子安に話す。
今になって自分の車が欲しくなった、今の移動の為だけの装置ではなく確かに自分では知らせることの出来る車が。
元エンジニアでバイク乗りでもあった子安は、そんなに気になるのなら自分で車を作れば良いではないかと答える。
実物を作るのは難しいだろうが、設計くらいなら今すぐにでも始められると。
そして、老人二人は老後の暇つぶしにいそしみ始めることになる……。
転章。
やっとSF臭が出てくる二軸目。
今より遥かな遠未来、人類が滅亡した後に翼人達が空を舞う時代。
主人公のキリアはかつて地上を支配していた人類を研究する研究所の研究員である。
研究を続けるキリアはある日、発掘が続けられる人類の遺跡から化石化した設計図が発見されたことを同僚から聞く。
人類の研究のために翼人達は設計図の車を作り始める。
神林長平の作品には珍しく人を選ばない作品。
かといって在り来たりな作品というわけではない、神林作品をそのように評価することはまず不可能だ。
今回の紹介は、ネタバレ回避の為にあらすじからも相当な部分を削ってあるので相当味気ない紹介になってしまっているが、この作品は本当にお勧めである。
この作品はぶっちゃけてしまうと老人二人が車の設計をするだけの作品なのだ。
それだけなのだが、何故か魂を揺さぶられる。