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のべかん第15回 コーヒーはアメリカの探偵の飲み物

2009年3月25日 siotsu

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元銀行員にして私立探偵事務所を開業した紺屋の元に舞い込んだ依頼は「人捜し」と「古文書の調査」。
おかしい、うちの事務所は犬探し専門のはずなのに!
ということで今回ののべかんは米澤穂信の「犬はどこだ」です。

脱サラで探偵もの、というのはおそらくそれほど珍しい設定でもないでしょう。しかし本作はおもしろい。おもしろさと斬新さは特にイコールでもないという実例です。

ミステリの感想をあまり詳細に書いてしまうとネタバレになってしまうわけですので適当に書きますが、気になったら読んでみればいいと思います。そういうスタンスは感想文としてはどうなのか知りませんが。

本作は探偵ものですが、なぜか不思議な謎を持った殺人事件が起こり、名探偵が関係者一同を集めて推理を披露すると、なぜか犯人があっさり自供したり、定年間際の刑事があっさり納得したりするような探偵ものではありません。

犬探しの探偵事務所「紺屋S&R」を開業した紺屋の元に持ち込まれた依頼は「人捜し」と「古文書の調査」。今ひとつ乗り気でない紺屋探偵と、探偵に憧れる押しかけ助手ハンペーが調べ始めた二つの事件はなぜかリンクする様相を見せ・・・、というのがあらすじです。

これがラノベなら探偵がクール系の美人さんだったり、押しかけ助手が元気な妹系の美少女だったりするわけですが、本作はラノベでないので探偵は25歳の元銀行員だし、押しかけ助手は探偵の高校時代の後輩でフリーター(ただし男)です。

基本的に普通の探偵小説で、小ネタは

「最近はあれがおもしろかったっすよ、えっと、あれ。なんとか畑でつかまえて」
「サリンジャー、か」
「え? ブランキーっすか?」

とかそういう、ちょっと年齢層高め向けのネタが少し混ざっている程度。
聞き込み、電話、資料を当たる、ネットなどなど・・・地味な探偵仕事を地味に描いていく作品ですがテンポがいいので地味でも面白い。

米澤穂信の他の作品、例えば「古典部」シリーズや「春季限定いちごタルト事件」「夏季限定トロピカルパフェ事件」がラノベ的なミステリ・・・日常的な小さな謎を素人探偵が解いていくキャラ重視のミステリなのに対し、本作はラノベ的要素が薄く、普通の(というとなんだか妙な表現になるわけですが)ミステリに近い感じです。
キャラがたっていないという意味ではなく、なんというか他のシリーズと比べて相対的にキャラの占める割合が低いというか。

キャラそのものは前述のように、元銀行員・紺屋をはじめとして、探偵に憧れるフリーター・ハンペー、ネット上で紺屋の相談に乗るワトソン的な位置づけのGEN、などそれぞれ個性的かつ魅力的(?)なメンツがそろっているんですが、どうも一作ではまだ本気出していない感じがあり、もう一作読んでみたいと思えます。

それだけなら普通に面白い探偵小説なわけです。
個人的にラストが好きなんですがネタバレになるので書けないのが残念なところです。
夏のクソ暑い日に幽霊でも見たかのような読後感と併せて、「犬はどこだ」オススメです。

そういえば。
都合により今回から敬称略でお願いいたします。

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