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のべかん第17回

2009年4月8日 siotsu

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さて、今回のネタは佐藤大輔の「皇国の守護者」です。
一時期はほとんど入手が不可能なくらいに品薄だった本作ですが、伊藤悠の漫画版が好評だったおかげか、最近はそれなりの本屋なら平積みされていたりします。中央公論新社から出ている原作は9巻で第1部完、漫画版の方も第1部完になってしまいました。漫画版の方もいろいろと噂があるようですが真相はどうなんでしょう。まあキリのいいところではあるのですが、続きも読んでみたかったので残念です。

そういえば今回からネタを考えるのが面倒になったのでサブタイは省略と言うことで一つ。

さて。
皇国の守護者は佐藤大輔の異世界ファンタジーで、ひたすら負け戦が続く、まさに佐藤大輔的な作品です。第一印象だけで言うならば、劇場版パトレイバー2で後藤さんが荒川を押さえたあたりで終わったかんじ。
「大協約」世界で、皇国と帝国(たぶんモデルは日本とロシア)の戦争をひたすら描く前半と、負け戦の中で祖国を売って保身をはかる一部勢力との内戦になりそうな後半で第1部完。たぶん続きは(略)なので、9巻で一区切りついたと考えた方が精神衛生上よろしいかと。

舞台は主人公・新城直衛の生まれ育った皇国と、その北方に存在する大国である帝国。
人族と龍族の間に交わされた「大協約」が存在する世界。
技術水準は銃が滑腔からライフリングに移り変わりつつあるくらいで、蒸気機関も主流になりつつある程度。
ファンタジー要素としてはある種のテレパシー的なものとして描かれる「道術」と、「猫」と呼ばれるサーベルタイガーと龍族の存在くらいでしょうか。

異世界ファンタジーとはいえ一応戦争をメインにしているので戦記物と言ってもいいでしょう。もともと佐藤大輔は仮想戦記の人ですし。
で、本作がこの手の戦記物の中で突出しているのが、登場人物のひねくれ具合と、敵が有能なことでしょう。
仮想戦記にありがちな「よくわからないけど超兵器」とか「友軍が妙に優秀」とか「敵が妙に無能」とかではなく、敵も味方も真面目に『戦争』をしているという点で得難い作品です。

新城直衛個人は野戦指揮官として十分以上に優秀なものの、戦争は末端の一戦闘単位が多少優秀なくらいではどうにもならないという事をこれでもかと言うほど見せつけてくれます。
もちろん創作なので、作者の意図だの展開上の都合だのある程度都合のいい展開だのはあるにはありますが、理不尽に都合のいい展開はあまりないのが安心して読めます。
勝っている帝国の側でも、総指揮官がユーリアから変わってからの方が強いというのは、やはり戦争はシステム同士の殴り合いなんだなあと思わせてくれます。

まあ創作なので主人公が大活躍してくれるのはそれはそれでいいんですが、そればっかりでもなあ、というひねくれた人には実にオススメです。
主人公は活躍してるにもかかわらず全体としては負けているというのも、実に戦争ですが、このへん、A君(17)の戦争も似たようではありますね。小野寺君は大活躍で戦闘には勝ってるのに戦争には負けているという。

戦記物的な要素もそうですが、登場人物の会話のひねくれ具合も佐藤大輔作品の魅力の一つです。
主人公の新城直衛は佐藤作品主人公の常としてわかりやすい性格破綻者で、そういえば地球連邦の興亡の南郷さんもそんな性格をしていましたね。パシフィックストームの真田少将も似たような感じですが、彼はかなりマイルドです。こちらも機会があればいずれ。

他にも皇国魔導院の羽鳥、皇国侵攻部隊の総司令官である帝国東方辺境領姫ユーリア・ド・ロッシナ、ユーリアの参謀でもあり教育係でもあったメレンティン、帝国軍騎兵のアンドレィ・カミンスキーなど、要するに主要人物がことごとく。
いきなり原作は9冊もあるしどうなのよ、という人には漫画版オススメです。
だいたい漫画化するとよくて微妙悪くて失敗というのは定番なのですが、伊藤悠の皇国の守護者は原作にかなり忠実な漫画化に成功した数少ない例です。ストーリーは当然として、絵や画面、表情などかなり優秀です。北領から撤退するまでの全4巻で、原作ではほとんど1巻の内容に相当します。

また、とりあえず原作を1巻だけ読んでみるというのもありだと思います。
アクが強い作品や作者の常として、信者とアンチがそれぞれにいますから(私がどちらかはレビューの通りですが)おもしろいと思うかつまらないと思うかは結局個人によるので、とりあえず試してみるという姿勢はおもしろい作品を探す上で非常に重要だと思います。

結局、私が本作に言えることはいいから続き書けと言うことだけなんですが・・・。
佐藤大輔は作品を完結させない悪癖だけはどうにかならないのか。

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