漆黒リボンは終焉に舞う【1】
2009年3月22日
暗雲立ちこめる物々しい神殿前で、桜色の淡いシフォンを多量に使ったコスチュームを纏った美少女と、紺青のマントで身を包んだ背の高い男が向かい合っていた。これが最後の戦いになる事を互いに承知している。そんな全てを悟ったような静けさが二人の間には流れていた。
どうやって、男を仕留めようか。
僕の頭はそればかりを考え、何度も美少女の身体を脳内で動かしイメージした。僕の思考をトレースして動く美少女は、もはや自らの意思など持ち合わせてはいない。
ぱっちりとまばたきをする大きな蘇芳の瞳も、豊満な胸元で揺れる赤茶の髪先も。それこそ頭から爪先まで、僕の意のままに動く美少女。現実離れしたその愛くるしさを全て手中にしたようで、気分は悪くない。それが例え、心のない人形と同義だったとしても。
構えの姿勢を崩さず、男と目を合わせたまま、美少女の身体は呼吸をする度に大きく上下した。
一方男は余裕の表情で不敵な笑みすら浮かべて微動だにせず美少女を見下ろしている。
美少女は、右腕をだらりと降ろしそれを左手で支えながら、立っているのがやっとだった。戦闘には不向きに思えるミニスカートは所々破れ、真っ白な太股が覗いていた。それが先刻与えられたダメージの強力さを物語っていた。
感傷に浸っている場合ではない事は百も承知だが、時折、考え込んでしまう。この状況は、美少女が望んだ事なのだろうか、と。僕のような只の人間の意識下で動く事が、美少女の本望だったのだろうか、と。
それでも、僕達はこの戦いを続けなければならない。